今さらながら『万引き家族』をみた。亜紀の意味は??

今さらながら😝、あの話題作『万引き家族』を視聴しました。
さすが、世界的な評価を受けた作品でした。
考えさせられる作品で、そして少々考えたので書き留めておく。

netflixより。以下同様


違和感というか疑問というか

視聴しながら、私がわからなかったのが、亜紀の役割でした。
わからないというか、違和感を覚えていたというか。
異質な彼女がここにいる理由は何だろうか??


そこそこ真っ当な実家があり、万引きをするわけでもなく、言ってみればちょっと多感な普通の落ちこぼれ。
祥太やりんのように、死ぬか生きるかといった虐待からの切実な避難ではなく、
ほかの3人の大人たちほど、肝の据わった反社会派でもない。
なぜ彼女はこの物語に必要だったのか?

そうか💡 亜紀と祥太は対なのだ!

私なりの結論。亜紀は祥太と対の役割を担っていた!

まずは言い訳。
これは私なりの解釈であり、すでに結論が出ていることかもしれないし…、
しかも一回だけの映画視聴で、先行批評もレビューしていないし…、うだうだうだうだ……
なにしろ、ただの自己満足なので、あしからず🙇

小魚世界とマグロ世界

この物語は、『スイミー』という童話の「小魚」世界と「マグロ」世界の対照構造で成り立っているよね。

「マグロ」世界とは、現代日本社会を生きる私たちが普通に「正常」と考える世界。
つまり、盗みはダメ。部屋が汚いのはダメ。訳の分からない家族関係はダメ。死んだ人を勝手に家の中に埋めるのはダメ。
法的あるいは不文の社会規範として、わたしたちが善し悪しのルールを定め、わたしたち全員がそれを守ることで社会秩序を維持している世界。
その世界秩序の番人として登場するのが、警察官役の高良健吾や池脇千鶴です。
実に「正しい」ことを言う人たち。

さて、古今東西、ルールがあるところはどこにでも常に、そのルールから外れる者がいる。
そのルールに息苦しさを覚えたり、レールからこぼれ落ちてしまったり。
そうしたマイノリティー(弱い小魚)たちがマグロ世界(普通の世界)に紛れて、なんとか自分たちの小ワールドを構成し、自分たちの価値観のなかで生きているのが万引き家族ですね。
店がつぶれない程度に盗みをするのはいいんじゃない。部屋が汚くて何が悪い。かわいそうな子供がいたら無断で拾って来よう。ヒトが死んだらこそっと家の中に埋めておこう。
この家でのネガティブルールはおそらく、無駄に「正しい」ことを言って人を責めてはダメ。誰かの居場所を無くすよなことをしたり言ったりしてはダメ。

翔太はマグロ

この物語で、翔太が重要な役割を担っているのは一目瞭然。いわゆるトリックスターだね。
翔太は小魚世界の住人だが、マグロ世界のメンタリティをもっている。


子供のころからなんとなく小魚家族と距離を置き、一人の空間や世界観をキープしていた。
成長するにつれて、小魚世界への疑心を拡大させ、
最後には自らの手で小魚世界を解体せしめた。
そして彼だけは、マグロ世界の福祉制度に適合し、本を読んで学習し、良い成績をおさめ、めきめきと立派なマグロに成長していく。
将来は高良健吾のように爽やかなマグロ世界の番人になるであろう。




亜紀は真正小魚だったのか~

ここからが本題。
先述したように亜紀は、万引き家族の中では最も、最初から最後までマグロの位置づけにとどまっている。
繰り返しになるが、あえて自ら法律を侵すようなことはしないし、
彼女の実家は、いろいろあるにしても、祥太やりんの実家ほど反社会的ではない。

そんな彼女だけが、疑似家族共同体が解体した後のあの家、小魚の館に戻ってきた。
彼女はどうしようもなくマグロ世界に馴染めないのだ。

あえて自ら法を犯さないのも、むしろ小魚的な弱さとずるさを体現しているのかもしれない。
自分ではやらないが、万引きしたラーメンを食べるのはOK。普通においしい。
自分ではやらないが、死んだおばあちゃんを埋めておくのはOK。そばに居られてうれしい。
自分から動きだしたり、毅然として誰かを守ったりするのではなく、
ゆるい小魚世界で、流され、甘えて、のらりくらりと存在させてもらう。
そう考えると、亜紀は、小魚世界のなかのさらに小魚的位置づけといえるのかもしれない。
トップオブザ小魚!亜紀は小魚世界のメンタリティを象徴しているのだ!!たぶん。

じゃあ亜紀のメッセージは?

亜紀と祥太は対なのだ!これは正しい気がする。
一方は小魚に見せかけたマグロ、他方はマグロに見せかけた小魚。
さらなる疑問は、肝心の、亜紀のメッセージがわからん。

亜紀と祥太が対になっているとしたら、
亜紀は、祥太と同じように、この物語において重要な位置づけのはず。
翔太が小魚世界を解体する役割を担っていたのだとしたら、
亜紀は小魚世界を復活させ維持する役割を担っているのか??
亜紀は今後、あの空き家に勝手に住み着いて、池松壮亮を連れ込んで、新たな小魚世界を創造していく位置づけかもね!?
「正しい」じゃない世界は、良くも悪くも無くならないのだ、というのが亜紀のメッセージ。でどうだろう??